概要
他に類を見ない壮観な城壁に包み込まれるようにそびえる要塞都市、アビラ。
ヨーロッパ各地に城壁に囲まれた町はいくつもありますが、多くはその後の戦い、街の発展や拡大等、時代の流れによって崩壊したり改造されたりして、その原型をとどめていません。しかしアビラの城壁は、12世紀当時の部分がほとんど見事に残っており、これほど古く、保存状態の良い完璧な城壁はヨーロッパ広しと言えどもなかなかありません。しっかり保たれた統一性と不思議な重厚さを兼ね揃えた城壁を見るだけでも、アビラを訪れる価値はあるのです。
アビラの城壁が格別美しく見えるのには、地理的要因もあるでしょう。アビラ県は南に山脈、北には平原が広がります。そのほぼ中心に位置するアビラ市は、スペインの県都としては一番の高所、標高1127mの高地にあります。高台の上から更に空へと延びる城壁は、どの角度からも美しく映え、その威厳と魅力を引き立てています。
アビラは別名「サンタ・テレサの町」とも言われています。日本人には馴染みのない名前ですが、カルメル修道会の改革を進め、「裸足のカルメル会」を設立したカトリック最大の神秘家の一人です。彼女はアビラで生まれ育ち、本来の厳格な戒律を捨てかけていた修道会を立て直しながら、新しい修道院を興していきました。街にはそんな彼女の強い影響を受け、修道院の名前から名物のお菓子まで「聖テレサ」の名は至るところに残っています。また、彼女の修道院改革運動の同志となる詩人、聖ファン・デ・ラ・クルスや、スペインの生んだルネサンス音楽最大の作曲家の一人、トマス・ルイス・デ・ビクトリアもアビラ出身です。後世に影響を残す多くの偉大なる人物がこの街で生まれ、功績を残しているのです。
また、城壁の一部として機能するカテドラルや「ベラコ」呼ばれる牛や豚の彫刻、現在はホテルや県議会堂、裁判所などに使われているかつての中世貴族の邸宅など、アビラの魅力は城壁だけにとどまりません。
17世紀以降衰退の時代へと向かったアビラは、1985年、世界遺産に登録されてから大きく活気づきます。現在の旧市街は歴史を感じさせる城壁の中に、県都として繁栄する賑やかな通りが並び、歴史遺産と街の発展が程良く融合した魅力的な世界遺産都市となっています。